いのちの営み探検部会 9月活動報告
カマキリの採餌行動や形態を観察し、バッタ類を追いかけて楽しむ予定が、カマキリが花を求めてくる昆虫を待ち伏せしている花が見当たらず、草むら・林縁部でも見付けられず、暑さも強くなってきたので諦めて早々と終了。
昆虫は一般的に複眼と単眼という2種類の眼を持つ。甲虫類は成虫になると複眼のみ、逆に単眼だけのものもいるようだ。
複眼
物の形を判断。個眼とよばれる数万の小さな眼が集まっている。複眼には網膜がなく、一つの個眼に入ってきた光は、その内部に像を結ぶのではなく、光は視細胞を一様に刺激し一つの情報をつくる。(いわばデジカメの「画素」に相当する)一つ一つの個眼が少しずつ異なる位置で光を集め、デジカメが一つ一つの画素の情報から画像全体を形成するように、全体として一つの像を形成する。もし複眼の視力を人の視力に換算すると0.1に満たないともいわれている。カマキリの眼は昼間は緑色だが夜には光を吸収する黒色になりエサを探せる。
偽瞳孔
複眼の中の黒点。見ている側から筒状の個眼の奥が見えている。一部の個眼だけが光の反射が無いので黒く見える。見ている角度により位置は移動。ガなど夜行性の昆虫は複眼のしくみの違いにより見られない。
節足動物門の昆虫類ではなく袋形動物門に属するハリガネムシがカマキリや大型のバッタ類の体内に寄生することがある。ハリガネムシの一生は、水の中の卵→孵化して幼生(幼体)→カゲロウなど水生昆虫の幼虫が捕食→羽化した水生昆虫の成虫の体内で休眠→カマキリなどが水生昆虫を捕食→カマキリなどの体内に入り養分をとり幼生(幼体)から成体へ→カマキリなどを水辺へ導き脱出→雌雄が出会い産卵。
出会えなかったカマキリとクルマバッタモドキの頭部 大きな複眼と小さな3つの単眼
クルマバッタモドキ/下左写真=耳(受信器官) 下右写真=各ふ節の下面は肉球状で滑らかな面に、その先には鋭い爪で凸凹面にも止まれる
暑~い!!日陰を求めて虫探し
上からササキリ・マダラスズ・オンブバッタ幼虫
ショウリョウバッタの触角時計
いのちの営み探検部会 7月活動報告
大阪の予想最高気温が35℃と厳しい暑さの中『ブルービー(青い蜂)の観察』に10名が参加。ルリモンハナバチ(ミツバチ科)はスジボソコシブトハナバチに寄生するらしい。オオセイボウはドロバチ類の幼虫に。ミドリセイボウはルリジガバチの幼虫に、イラガセイボウはイラガのまゆに寄生する。(以上セイボウ科)等の簡単な説明の後…。ルリモンハナバチがよく現れるアメンボ池近くに向けて出発。途中でキムネクマバチ、タイワンタケクマバチ、トンボの仲間等を観察しながら、アキノタムラソウの群落があるポイントに向かう。
アキノタムラソウの花には、トモンハナバチ、クロマルハナバチ等のハナバチの仲間やクマバチ、ハナアブの仲間が蜜や花粉を求めて飛び回っている。それらを注意深く観ていると、いました青い蜂、ルリモンハナバチが。その後もあちらこちらで見かけたので、写真におさめようと追いかけるがピントが合わず、なかなかうまく撮れなかったのは残念だったが、多くのルリモンハナバチに会えたのでまずまず満足できた。
(今回は観察できなかったがミドリセイボウは特に美しく、岩湧山の四季彩館テラスで出会えるかも)(K.I)
ブルービーを探す
ニイニイゼミの抜け殻
タイワンタケクマバチ
いのちの営み探検部会 6月活動報告
始まるまでの待機時間に、まず一週間前に錦織公園で採取した変形体を観察してもらった。まさにアメーバか?移動の様子はすぐには観察できないが、午後の確認ではかすかに移動が見られた。
粘菌観察を当カレッジで初めて取り組んだのがいのちの営み探検部会であったとか。それ以来、講座でも和歌山県立自然博物館の川上新一先生に講師をお願いしている。私も15期生で粘菌の沼にすっかりはまってしまって1年あまり。ようやく一人でも見つけられるようになったばかり、なかなか簡単には姿を見せてくれない。さて今日は?と心配したが、私事で延期してもらったお蔭や粘菌仲間との下見、前日の雨、何よりも会員の熱心な観察のお蔭で大収穫だった。
午前中は、粘菌について簡単な説明をして私たち粘菌仲間で呼ぶところの粘菌平と粘菌谷を観察。赤いウツボホコリ、白いツノホコリ、灰色のシロウツボホコリ、黄色のアオモジホコリらしきもの、淡いえんじ色?のムラサキホコリと不明の黄色の粘菌一種を見つけた。ムラサキホコリは前々日の下見ではほとんど姿を見せなかったのが、一気にあちこちに発生。見つけるたびに歓声が上がった。皆、それぞれにスマホに可愛い粘菌の姿を収めることができた。
午後からは、念のために持参した主に烏帽子形公園で採取した粘菌の標本をもとにルーペや顕微鏡(粘菌仲間が持って来てくれた)で子実体の姿の美しさ、不思議を観察して解散となった。雨後の暑くもなく寒くもなく、そして適度な湿度のなか粘菌観察としては最良の日だった。K.T(写真協力K.A)
錦織公園で採取した変形体
ウツボホコリ
ツノホコリ
シロウツボホコリ
アオモジホコリらしきもの
ムラサキホコリ
不明の粘菌
いのちの営み探検部会 4月活動報告
白やピンク、黄色、紫。色とりどりのの可愛い花の季節となった。一般に、花が美しく目立って見えたり、よい香りがしたり、蜜を分泌したりするのは、鳥や昆虫などの動物を誘引するための適応である。このような花は虫媒花、鳥媒花とよばれる。一方小さく目立たない花もある。その多くは風媒花である。風の力を借りて花粉をとばす。色、香りなどの魅惑的な花の特徴は、風媒を目指すものにとっては無用。開花していても気づかれることすらない。
今回は、風媒花を中心に、種々の植物の子孫を残すための戦略の観察を試みた。1番の目当てはカテンソウ。所々で群落を成すが、小さく地味な花は人目を引くことは少ない。かつて動画でカテンソウを知って以来、この花のダイナミックな花粉飛ばしを、自分の目で見たいと思い続けてきた。じっと待っても、なかなか花粉を跳ばさない。花に手掌を近づけ、そっと温めた。しばらくして煙のようなものが。花粉が跳んだ!! 次いで、別のおしべも腕を伸ばし花粉を跳ばした。一瞬の出来事。残念ながら写真に記録はかなわなかったが、しっかりこの目に焼き付けた。
次に目指すはイロハモミジ。秋の紅葉やプロペラのような実は馴染みがあるが、花は??今が花の季節。気づきにくい風媒花である。雄花と両生花があり、まず雄花が、遅れて両生花が咲く。両生花には数本のおしべと先端が2裂した一本の長いめしべがある。花は赤みを帯び、緑の葉とのコントラストが美しい。次に、スイバ。スイバは雌雄異株。雌株と雄株がある。雄花は細い柄でぶら下がっていて、風で揺れながら花粉を放つ。雌花は花粉をのがすまいと、赤くふさふさした柱頭を持つ。どの花にも子孫を残すための巧みな仕組みを見た。(文:A.F 写真:K.IとA.F)
春の花
いのちの営み探検部会 3月活動報告
啓蟄も過ぎ、暖かい気配を感じ、本格的に目覚め始めた若芽や花によって大地が色付いてきている。土の中や地上の虫たちも活動を始めてきた。今回は、公園内を楽しく散策し、自然や生きものを通して春の季節を実感しよう。
公園西側の桜木の里には、早咲きで木全体としては開花期が長い、カワヅザクラ(河津桜)が満開。静岡県河津町で発見されたサクラで、オオシマザクラとカンヒザクラが自然交配して生まれたそうだ。東側の桜木の里には、ソメイヨシノ(染井吉野)が。此方は未だ蕾状態。1つの花芽から複数の柄が伸びだし、その先に花が咲く。普通は3~4個の場合が多いが、元気ある木なら6個以上咲き、夏の大雨や台風が少なければ多く咲く傾向がみられるようだ。桜の花は、前年の8~9月の花芽形成→休眠(10月から11月頃最も深い)→休眠打破(冬の低温を経験する間に成長を抑制する植物ホルモンが減少し、同時に成長を促す植物ホルモンが増加して休眠が解除)→成長→開花する。
今回出会った早春に開花しているコブシやレンギョウ、マンサクなど、葉が出るよりも先に開花している。草本のように光合成でエネルギーを貯めてからでなく、既に幹や根に貯めていたエネルギーを使っているのだろう。花芽と葉芽の開くタイミングは、何が契機になっているのだろうか。虫たちには目がいかなかったが、花を求めて飛びまわり、葉っぱや地上を這いまわっているのだろう。奥の池では、ヒドリガモ、ヨシガモ、オカヨシガモ、オシドリなどカモ科の7種とオオバン、カイツブリの確認、パートナーを見付けてそろそろ北の繁殖地へ帰るのだろう。ツバメが営巣のための新居の場所を探しているのか建物周りをスイスイと滑空。いよいよ春だ!!(T.M)
左はカワヅザクラ、1個の花芽から3個の花が咲いている。右はソメイヨシノの花芽を切ってみると3個の花が。少し元気がないな。
プロパンガス臭や酒粕に似た匂いとか醤油の香りがしていると言われるヒサカキの花、白い小さな花が枝にびっしり並んでいる。
マンサクやクロモジやアブラチャンなど、早春に咲く樹木の花は黄色が多いのはなぜなのか。花粉媒介をする昆虫などの活動時期と関係があるのかな?
ヒメウズ(姫烏頭)のウズは烏頭(トリカブトの根茎)のことで、葉の形が烏頭に似ているのが由来。径5㎜の花びらに見えるのは蕚で、その内側に花弁が5枚。
いのちの営み探検部会 2月活動報告
冬は生き物にとってたいへん厳しい季節。
いきものたちはどのようにして寒さをやり過ごしているのだろう。落葉樹は冬芽を作り、静かに越冬。春を待ちます。草の中には葉を放射状に広げて、地面にぴったりつけた状態で冬を過ごすものもあります。この状態の草をロゼットと言います。地表を覆うようにして葉を広げ、陽射しを一杯に浴びて春を待ちます。春になると、種から芽を出す草よりいち早く成長できます。公園内には多様なロゼットがありました。園内は手入れ良く、草刈りがされていたけど、地面ぴったりに広がるロゼットは刈られることなく、無事。現 代を生きる延びるにも良い形と、勝手に納得しました。
日当たりの良い暖かいロゼットの下にはベニシジミ幼虫や、アブラムシなどが隠れていることもあり、虫たちの冬越しに出会えることもあります。今回は樹皮の下、木の枝などでいろいろな虫たちの生き様に出会いました。カマキリは卵を卵嚢に包んで越冬。イラガは幼虫が繭を作りその中で、越冬。しかし出会ったのは繭の抜け殻のみ。残念!コナラ朽ち木断面ではカミキリ幼虫と、幼虫の食痕が。ムクノキ樹皮の下には越冬中の数匹のダンゴムシとイチモンジハムシを見つけた。イチモンジハムシは黒光りする丸みを帯びた体と、その前胸部では鮮やかな黄色の中に4つの黒紋が並び、美しい。さらには、テントウムシとそのさなぎ、さなぎ抜け殻も発見。日常なかなか気づくことのない、小さな虫たちの厳しい冬を生き延びる姿に感動を覚えた。時々小雨が降る天候で、ムラサキシジミなどの蝶の飛翔に出会えなかったのが残念でした。 (A.F)
いのちの営み探検部会 11月活動報告
暑い日が続き、進まなかった紅葉も、ここ数日の冷え込みで、いっきに美しい彩りを見せるようになった。公園に入るとすぐに、大きなケヤキの黄葉が、さらに遠くには緑、黄、赤のグラデーションを示すモミジが美しい。なぜ落葉樹は秋には紅葉し、落葉するのだろう?葉の緑はクロロフィルを含む葉緑体による。太陽を浴びて光合成をし、二酸化炭素と水からグルコースと酸素を作る。
秋。日照時間の短縮、気温の低下は、光合成効率の低下をもたらす。葉は老化し植物生存に不利なため葉を落とす準備を開始。まずは再利用できる物質の回収を行う。クロロフィルを分解し、冬芽や根などの器官に運ぶ。これらを翌年の資源として貯蔵し、成長のために利用。さらに葉柄付け根に離層を形成し、葉と枝を結ぶ管を遮断。物質の流通を遮断する。結果、葉の細胞の液胞には老廃物と共にグルコースが蓄積する。
(参考:https://buna.info/article/1929/)
葉が赤くなるのはアントシアニン
離層の形成に伴い葉にグルコースが蓄積→このグルコースがアントシアニンの前駆体に結合するとアントシアニンは完成する。抗酸化作用や、活性酸素の生成の抑制といった働きがある。
黄色の葉:カロチノイド
黄色の正体は、カロチノイドという色素。もともと緑色の葉にもカロチノイドはあるが、クロロフィル量が圧倒的に多く、カロチノイドの黄色はクロロフィルの緑色に隠され、葉は緑色に見える。しかし秋、葉の老化に伴いクロロフィルが速やかに分解。隠れていたカロチイドの黄色が目立つようになる。カロチノイドは強い抗酸化作用を持つ。イチョウの葉は黄葉から紅葉への変化を示さない。このような葉はは遺伝子にアントシアニンを作る仕組みを持たないのかもしれない。
茶褐色になる葉
葉の中のクロロフィルの分解と共にタンニンの仲間が増え、茶色になる。タンニンは紫外線を吸収し、細胞内のタンパクや核酸などを紫外線から保護。
紅葉する木を観察すると、一本の木の中でもきれいに紅葉する葉や、黄色そして緑の葉などのグラデーションがある。何故・・・?アントシアニン産生には日光が大事らしい。重なり合った葉で葉の色を観察した。ヤマボウシの葉である。重なり部分に合わせて、明瞭な境界が見られる。上の葉の陰になった下葉の部分は黄色。十分に陽を浴びた部分は紅葉。陽の当たり具合によってアントシアニン産生が影響を受けることがわかった。
加えてもう一つ、錦織公園で紅葉を観察したい植物があった。2019年3月いのちの営み探検部会で出会った食虫植物コモウセンゴケ。大阪では準絶滅危惧種。今も無事に生きてるだろうか。きれいな紅葉を見せてくれるだろうか。・・・あった!! 美しい紅葉とは言えなかったが、しっかりとこの公園に根を下ろしていた。(A.F)
ヤマボウシの葉。アントシアニンの形成には日光が必要。葉で日光を遮られた下の葉は赤くならない。上の葉の輪郭と、相似形で下の葉の赤と黄の境界が現れる(黒の縁取り)
右下:被さる上の葉を除いた。上葉で隠れていた部分が明瞭に黄。
モミジバフウ。
黄〜深紅まで様々な色合い。
右下:モミジバフウの葉と種子
食虫植物コモウセンゴケ。
左:2019年3月撮影。右2023年11月撮影。秋の紅葉というより褐葉?
いつまでも元気な姿が見られますように!!
サクラの葉と枝の間に形成された離層。サクラの枝を少し削り、観察。
離層は物質の流通を遮断する
トチノキ。黄葉から褐葉へ
左下:トチの実
木々の紅葉。ケヤキ、モミジなど