17期生7月23日講座報告
今日は、泉北高校にお邪魔して、ビオトープ池とそこに生きる動植物の観察です。生物を動物と植物に分けるのは小学校まで。最近では分析などから原生生物界・モネラ界等の5界説、今では3ドメイン説の分類になるそうです。難しいことはさておき、非常な暑さの中、ビオトープ池に行きいろんな生物を採集して顕微鏡で小さな生物の世界を観察することができました。
中庭で、先生や学生さんが植栽した植物の観察から始まり、ガガブタという変わった名前ながら白い可愛い小さな花が咲いていました。そして、ガマとヒメガマの違いを教えてもらい、小さなエビやオジギソウなど面白い生き物がいっぱいでした。学生さんの育てたスイカは、残念ながら狸の餌食にされたとの話を聞きながらビオトープへ移動。そこは、木陰でかつ豊かな自然のため暑さも緩んだ感じで、各自が池の水や草をスポイトやピンセットを使って夢中になって採取しました。
30分ほどの採集のあと冷房の効いた部屋に戻り、顕微鏡観察を始めました。はじめに顕微鏡の使い方、低倍率レンズを最も近いところから対物レンズを少しずつ離し焦点を合わせることを復習しました。採集した水には、残念ながら見つけることができませんでしたが、先生に準備してもらったサンプルにはたくさんの生命が生きていました。オオカナダモ、元気に動き回るミドリムシやミジンコ、丸い形で中に小さな緑があるボルボックス葉緑体がらせん状のアオミドロ、ワムシ、イシクラゲなど多くのプランクトンを見ることができ、葉緑体の形や状態、ミジンコの卵など興味深いものも観察できました。
その後、高校でビオトープを造成した時の話、管理方法から始まり、ヒシ、ガガブタ、オオミクリ、ジュズダマ、ヨシなど植物が意外にも簡単に育ったこと、ウシガエルの大量発生や招かれざるアメリカザリガニの話など、楽しそうであり、大変そうな維持の苦労話を伺いました。ビオトープが身近になるのは難しいかもしれませんが、自然の維持にはある程度の配慮が必要で、そこには目に見えない小さな生き物たちが元気に生きていることを学びました。(Y.M)
17期生7月9日講座報告
菅井先生には昨年10月に「自然観察の視点」というテーマで、一つ一つの自然観察を通じて「知る」「感じる」「考える」など意識することを学びました。今回は、今までほとんど意識していなかった海の小さな生物、微小な貝の世界について学び、本当に今まで気づきの無かった世界でした。
まず、沖永良部島の砂には何が見えるか?ルーペを使って一粒ずつ見ていくと、星の形、丸いもの、細かな穴の開いたものといろんな形があり、大半が有孔虫の殻で、星砂探しに夢中になりました。次に、海岸で採取した砂から小さな貝殻を観察し、目を慣らしていき、最後に三重県から採取してきた砂から微少貝探しを。みんなますます静かになって真剣にルーペを見ながらピンセットで81マスの白黒のシートに丁寧に並べていきました。すると1ミリ前後の小さな巻貝の多いこと。最近3000m級の深海から多くの微少貝が見つかって、大半が新種の巻貝(今まで誰も観察していないので)で、その小さな外観には道路わきの格子状の擁壁のようにも見える繊細な彫刻があり、深海の水圧に耐えられるよう強度を上げているとのこと。また小さな貝になるほどその彫刻も複雑になって、その美しさには驚くばかりです。こんな小さな貝たちが海岸の砂浜にあふれていたとは全く知りませんでした。気づけばその自然に引き込まれますが、気づかなければ今まで通りで、改めて気づきの大切さを感じました。
微少貝の観察から、すべての生命はありのままで真理に適っていて平等で、それぞれの使命・役割を果たして生きており、これらに気づくことで驚きと感動を受け心の安らぎと浄化につながっていく事。小さな生命の存在を通じて、これからの生き方まで学ぶことができた気がします。(M.Y、M.N)
微少貝探し
微小貝を見やすく模写した絵
微小貝を碁盤目の白黒模様紙に並べる
黒い紙の上に分類した微小貝
微小貝を熱心に分類中
㎜位のガラス管に入れた星砂
笠貝
17期生7月2日講座報告
今日は、過去にはいろいろと分類されていましたが、最終的に動物でも植物でも菌類でもない生命体とされ、森の魔術師、森の宝石、森の妖精などと呼ばれている粘菌について学びました。粘菌には変形菌、細胞性粘菌、原生粘菌があり、アメーバ細胞期に餌を求めて動き回り子実体になると、きのこのように胞子を出す単細胞生物で、何億もの胞子をホコリのようにとばして、成層圏まで飛び、世界中に広がっていくとのこと。タイムラプスで撮影するゆっくりした動きから、世界中に飛び回るようになるとは本当に魔術師です。自然界では餌のバクテリア、カビ、キノコの減少により植物の分解遅延、保水力向上に寄与しているようです。
今回はあまりの暑さに、午前中に軽く予習をして粘菌探しフィールドへ。午後は採取したものや、先生が採取された粘菌を顕微鏡で観察になりました。どんなものかがもう一つはっきりしていなくて、粘菌だと思って先生に見てもらっても堅いキノコや菌類がほとんどでなかなか見つけられませんでした。何度も重なった枯葉や朽ちた木々をひっくり返してようやく先生から粘菌だとお墨付きをもらって、大喜びの場面も。苦戦の末にムシホコリ、アミホコリ、シロウツボホコリ、サビムラサキホコリ、ガマグチフクロホコリ、ツノホコリ、タマモチモジホコリ、ジクホコリ、エダナシホコリの9種類見つけられました。顕微鏡観察で標本の子実体のかわいい姿を見て驚き、撮影にもトライしました。今度は梅雨時期の元気な粘菌に会いたいと思いました。
顕微鏡観察
17期生6月4日、5日講座報告
芦生の森は、京都北部の由良川源流域に位置する約4200haの関西屈指の天然林です。日本海型と太平洋型の気候を有し、暖温帯と冷温帯の移行帯に位置するため、植物や動物、昆虫などの種類が多く、学術上貴重な種も多数見られます。現在は京都大学の芦生研究林として、研究や教育目的で管理されており、通常は入れない上谷・杉尾峠コースをガイドさんの案内の基、渡渉を含めたトレッキングと由良川源流到着に挑戦します。
電車を乗り継ぎ園部駅集合、それからは芦生の山の家のスタッフさんの運転でまずは美山かやぶきの里へ到着。白川郷に引けを取らない多くの合掌造の建物がありました。地域を散策した後、芦生山の家に到着。資料館である「斧蛇館」で研究林の概要や保護について学んだ後、「アカショウビン」の声を聞きながらトロッコ道の散策も楽しみました。夕食後、懇親会のゲームで盛り上がり1日目は終了。
翌日、朝食後長靴に履き替えて出発しました。途中、大カツラに立ち寄り、樹高34m太さ3.4mの巨木に圧倒され、木の上にはヤマザクラやコシアブラなどたくさんの樹木が着生しており荘厳とさえ感じました。引き続きバスで長地谷作業所に向かいトレッキングの開始です。ギンリョウソウ、ミズなどを見ながら歩くと渡渉が始まりました。せせらぎの音を聞きながら、20回以上の沢渡りを繰り返し歩くと、いろんな植物・動物の痕跡が観察できました。苔むした岩や倒木とその上に咲く幼木、アカハライモリ、サワグルミ、熊ハギにあった立木、落ちているトチの実、ツルアジサイに絡まれた巨木や綺麗に咲くヤブデマリ、高い木の上のモリアオガエルの卵塊、変な形につながっているサルナシ、ホウの花、エアプランツのようなハナゴケ、ブナ、トチノキの巨木など次から次に興味深い自然を見て、ガイドさんの説明を聞き、驚き、楽しみました。
自然の雄大さは十分感じられましたが、シカの食害による植物の減少や防護ネットを見ると自然を維持する大変さも感じました。さらに谷に子鹿の死骸を見かけ、動物たちも生きることに必死なことを感じました。食後、少しずつ狭く、急な道になると、そこには地味ながら水が湧き出る由良川源流がありました。福井県に一瞬通り過ぎ、迎えのバスに到着、山の家に移動しました。貴重な自然に触れる経験ができ、さらには食事・宿泊・丁寧な内容のガイドと大変お世話になり、山の家の皆さんありがとうございました。(Y.M、M.N)
森の植物や生物
森の中の植物や動物の跡
17期生5月28日講座報告
今日は、加太の海岸までやってきて、ウミウシの観察です。ウミウシのイメージは海のナメクジのような…?しかし、全く違って綺麗でかわいい生き物でした。駅から、2㎞ほど歩いて目的地の城ヶ崎海岸に着きました。非常に凹凸した段丘のような感じですが、横倒しの地層のうち、やわらかい層が浸食されて洗濯板上になったとのことです。目の前に広がる海についての説明から始まりました。大阪湾は二つの出入り口(明石海峡と紀伊水道)があり他にはあまりない湾であり、その特殊な環境のため多くの生物がいるとのことです。ウミウシは雌雄同体で貝類に属しますが、美味しくない体を作って外敵から身を守り、貝殻を捨て、動きがゆっくりでも現在まで生き延びている生物。模様の綺麗なウミウシも多数います。
早速海岸に降りて、足元に気を付けながら、赤クラゲ以外危険な生物が居ないので、干潟の石をひっくり返し、丹念にウミウシを探します。最初は、どのような物かが分からず苦戦していましたが、まずはオカダウミウシを見つけ、交尾をしている大きなアメフラシを見つけました。そしてウミウシ探しに夢中になりましたが、あっという間にお昼の時間になりました。
昼食後、再び磯へ行き何度も何度も石をひっくり返して探し続け、10種類見つけることができました。青いアオウミウシやオレンジ色のキヌハダウミウシ・イソウミウシは綺麗でかわいいものでした。その他に、タコやヒトデ、赤クラゲなども見ることができ、好天の干潟で童心にかえって楽しい観察会となりました。
アメフラシ
見つけたウミウシたち
ウミウシノート1
ウミウシノート2
17期生5月14日講座報告
デジタルカメラが登場して約25年、130万画素から性能は著しく向上し、今では主流はスマホカメラになって、1億画素のカメラまであるそうです。ネイチャーフォトはこれらのカメラを用いて自然を撮影した写真(風景、山や空、野生の動植物、水中写真)で、知識や撮影方法、便利グッズ、アプリなどについて学びました。接写やマクロ撮影などを多く紹介され、顕微鏡モード、焦点深度合成モードがあるカメラは活用しやすいようです。タイムラプス(長時間の変化を短く撮影すること)で粘菌の成長の変化がハッキリとみられ面白く驚きました。そして実際に、先生が用意されたドングリや小さい貝、十円玉を大きく写したり、旧札の千円札にあるNIPPONGINKOUの細かい文字を探したりして楽しみました。
午後は、近くの長野神社(重要文化財の本殿、天然記念物のカヤノキをはじめ、周囲の変わった形の植物群、昆虫、花など)でネイチャーフォトの被写体を探し、各自撮影をしました。戻ってから4~5人のチームごとに披露しあい、被写体は同じでもアングルや移し方によってそれぞれ違い興味深いものでした。最後に、先生の世界クルーズ時の船上の夕日、星空(南十字星)、雲など美しい映像にうっとりし、またトンボの交尾、胎生のアブラムシ、オナガグモの餌取り、ハエトリグモの顔のアップ、ナナフシの交尾など普段見られないものをたくさん見せていただきました。
自然の動物 昆虫
昆虫たち
17期生5月7日講座報告
今日は、京都の深泥池の特殊な植生についての講座からです。周囲1.5km面積9ha(浮島3ha)の深泥池は、暖温帯にある低層湿原と、本来もっと寒冷な地域に成立する高層湿原の特徴を併せ持っています。その浮島には12種もの食虫植物が生息する特殊な生態系のため、昭和2年に天然記念物に指定されました。
まずは、池のタヌキモを観察しました、小さな袋が多数付いて、緑色のものと黒いものがあり黒い袋は餌の微生物を捕まえたものだそうです。小ぶりなオオバナタヌキモ(外来種)も観察できました。ジュンサイも生息していますが、水面いっぱいに繁殖するため、年に1回の駆除が必要で、ジュンサイのお土産はもらえますが大変な作業とのことです。またこの特殊な生態系を生み出した理由は周囲の地層がチャートから成っており、入り込む河川がないことが上げられます。雨水は栄養が乏しく、水以外から栄養を取り込む食虫植物には有利な点だそうです。また、14万年前の氷河期から高層湿原は貧栄養な水質、PH、少ない酸素量、冬の寒冷化などいくつもの要因が重なり他に類が無い生態系を維持していることを学びました。そのため外部環境から新たに水や外来生物が流入すると、すぐにその生態系に影響が出てしまうため、外来魚の駆除も毎週行い、樹木の伐採テストや水質、水位を管理して維持など、貴重な深泥池の存続の大変なことを知りました。
午後は、京都府立植物園。大正13年に開園し、昨年100周年を迎えた日本最古の公立植物園で甲子園球場6個分の面積、12000種の植物があるそうです。早速、花壇に咲くアヤメから多種の花を見ました。アイスランドポピーは蕾が下を向いていて咲くと額がなくなるとのことで興味深いものでした。180種ある桜の中で最も開花の遅い5月に咲く「奈良の八重桜」、ジュラシックツリーと呼ばれる2億年生存し続けているウォレマイパインメタセコイヤ発見の経緯、イロハモミジの7つに分かれた葉と赤い種、変わった形のショウブの花、金魚葉椿の葉、アイラトビカヅラの花、呼吸根などの説明を受けました。巨大なヒマラヤスギは実は松の仲間とのこと。また、鑑真和上由来の中国の瓊花についてなど、興味深い話も聞けました。ガイド終了後、4700m²もあり4500種の植物がある温室へ移動。中には唇のようなバリコウレアトメントサから始まり、かわいいフクシア、変わった形の蘭の仲間等を楽しみました。(Y.M、M.N)
温室の植物
17期生4月25日講座報告
午前は、火山活動の概要から、大阪周辺の代表的な火山地層の講義でした。現在は、活火山は112座あり、休火山・死火山の分類表記は廃止になったそうです。 火山爆発として最近起こった木曽御嶽山や雲仙普賢岳の火砕流の体験や被害状況、富士山は1200間10回の噴火がありその想定被害を学びました。桜島のように噴火し続けている山もありますが、予想していない大きな噴火は大きな災害になることを改めて理解できました。 現在本州西部と四国には火山がありませんが、1400~1600万年前に形成された二上山付近は、多くは地下深くの溶岩が固まった岩頸ですが、屯鶴峯では火砕流の堆積ででき、14層を確認できるところがある事を知りました。
午後は、何とか天候も回復してきたので、是非とも屯鶴峯の景色を見たいということで現地へ。二上山駅から登山口まで2.5㎞を歩きなんとか到着。登り始めたら、すぐに広大な白い地層が見られしばらく感動です。そして実際に地層を触るとザラザラで小さな石を見つけました。確かに球形ではなく、楕円(ラグビーボール状)や円盤状の1~3mmの豆石を確認できました。天候の不安もあり早々に駅に戻りましたが、またゆっくり訪れたいと思える奇岩の景色でした。
屯鶴峯の火砕流
14回以上火災流が発生した
火山灰が固まり出来た豆石
17期生4月9日講座報告
あくあぴあ芥川は、高槻にある全長23kmの芥川の豊かな自然環境とそこに生息する50種に及ぶ生き物について、学べる自然博物館で450種の展示があるとのこと。2階にある大型水槽で、飼育されている魚に餌をやりながら観察し、様々な淡水魚について説明を受けました。鯉、銀ブナ、オイカワ、タモロコ、カワムツなど上~下流域に分けて展示されており、餌が入ると水槽は大騒ぎでキラキラ光る魚はとても綺麗です。説明で鯉のヒゲは4本あることや喉に歯があること、鯉は底から餌を食べ、オイカワは浮いている餌を狙うなどそれぞれ個性があることを知りました。各水槽では、ウナギ、スッポン、イモリ、ドジョウなどが展示されていました。
昼食後、JT生命誌研究所へ移動。まずは蘇智慧先生による「イチジク植物とイチジクコバチの共生関係」の講義。おかげで、なぜ無花果と書くのかが理解できました。無花果の実は内向きに花が咲き、受粉のためにはそれぞれ対応した種のイチジクコバチが実の内側の花に侵入し受粉させるとともに、コバチの産卵が起こり生まれた雄は一生花の中で過ごすという特異な共生があるとのこと。不思議でちょっと考えられない共生関係を学びました。ただし、今食べている無花果には、共生のしくみは無いためコバチは入っていないと聞くと、皆安心しました。
その後、館内の展示を3班に分かれ見学。中村桂子名誉館長の生命科学から生命誌への移行という考えに基づいた、生命の起源や進化、生きていくための生命現象などいろいろな展示がありました。38億年かけてシアノバクテリアから生命が進化し、地上に上がる経過の展示や、蝶の食草園ではそれぞれの蝶の好む餌が育てられ、その研究を通じて足に味覚があることが分かったなど、非常に興味深いものでした。また食草園では講義で聴いたイヌビワ(イチジクの仲間)がありコバチが入った前後の実を観察しました。最後に17世紀に昆虫の生態を研究、絵にしたマリア・ズイヴィラ・メーリアンさんの展示と生きた化石といわれる肺魚を見て、生命の進化と細かな観察を通した研究の面白さが再認識できました。(Y.M)
びわの実のコバチ有無
1JT研展示見学