大阪シニア自然カレッジ

植物部会 6月活動報告

開催日2025年6月4日(水) 晴れ
観察場所春日大社 萬葉植物園(奈良市)
場所29名

「萬葉集には約180種の万葉名で詠まれた植物が登場し、現代の植物名とは異なるものも多く、多数の植物説があるものが含まれていますので、園内には約300種が万葉植物とされ植栽、育成されています。植物園とありますので、花が見られると思って入ってくる外国の観光客の方もいらっしゃいますが、フジの花が終わった今頃は花が少なく・・・」と園内に入る門の前から本植物園の管理を任されている春日大社職員のKさんの説明から植物解説は始まった。万葉集の中で詠われる全ての植物が順次園内集回路の両側に植えられ、植物毎に万葉植物名、現代植物名、植物名を詠んだ万葉歌とその数、植物の解説板がその前に立っている。園内に入っても、Kさんの饒舌な解説は留まる所を知らない。70種を超える植物を次から次へと休むことなく説明していく。聞き入る我々も、時にはユーモアを混じえた解説ぶりについつい引き込まれ喉の渇きを忘れるほど、あっという間に予定の1時間半を過ぎていました。最後はつい最近一般公開された園内の「神庭」と呼ばれる石庭を案内され、午前の部を終了。部員の皆さんも、疲れも忘れ充分満足したとの声でした。

午後は奈良博物館へ行く人たちと離れて、春日大社の境内林と奈良公園の巨樹巡り。大社の南に位置する幹回り5mの巨樹のイチイガシの近くでようやく昼食。食後はスギの巨樹とナギ林を見ながら飛火野へ、林下は鹿の食べないイワヒメワラビやナチシダ、アセビが所々に生えているだけで、ずうっと先まで見通せる。飛火野ではここ春日山原生林で多く生えているイヌガシと野原に孤立するクスノキの巨樹を遠目に見ながら浅茅ヶ原を抜け奈良博物館の南へ、幹から竹が突き出しているムクロジの巨木、花が終わったばかりでまだ花柄を残している刺だらけのサイカチの古木とその隣のアキニレを観察。木の周りは柵で囲まれ、その下では鹿が地面から一面に生えている若草を残して周りの僅かな草を採餌している。鹿の食べない草とは何?イラクサ?ここを最後に本日の部会はお開きとなった。

とにかく公園内やバス、電車は外国人を多く含む観光客と修学旅行生で人、人、人の波。いつもの部会より数倍疲れたように思います。

解説して頂いた植物の中で印象に残ったものをあげますと・・・

むらさき(現代植物名:ムラサキ)

丁度、開花の季節、枝先に小さな紫ではなく白い花が数輪咲いていました。ムラサキは絶滅危惧種で、紫根は紫の染料となり、ほとんどが栽培されていますが育てるのが大変難しいようです。また薬草としても紫根から抽出されるシコンエキスはボナギノール等の薬品名でも知られています。さらに付け加えるならば紫根は土中にあるうちは紫でなく、土から離れてはじめて紫色となるそうです。萬葉歌には「茜さす紫野(むらさきの)行き 標野(しめの)行き野守(のもり)は見ずや 君が袖振る」額田王、の他9首。

さきくさ

漢字では三枝と書き、現在では音変化してさえぐさ、さいぐさと読んでいる。字から茎から三つの枝が出ている草木を指すが、具体的には諸説あり解っていないようです。ミツマタが最有力で他にはフクジュソウや沈丁花の名も挙がっている。萬葉歌は「春さればまづ三枝(さきくさ)の幸(さき)くあらば後(のち)にも逢はむな恋ひそ我妹(わぎも)」柿本人麻呂歌集の中の歌でさきくさは幸の枕詞で使われており、植物の同定しにくいことが解ります。

おもひぐさ

現代植物名はナンバンギセル、歌からも尾花(ススキ)に寄生する植物のナンバンキセルが頭に浮かびます。頭を垂れて物思いにふける姿とか、萬葉歌は「道の辺(へ)の尾花(をばな)が下の 思ひ草 今さらさらに 何をか思はむ」作者は不明でこの1首のみ。

かたかご

現代植物名はカタクリ、カタクリはかたかごの変化したもの、現在でも和歌俳句の世界では、かたかごという名前でよく詠われていますが、萬葉歌では「もののふの、八十(やそ)娘子(をとめ)らが、汲み乱(まが)ふ、寺井(てらゐ)の上の、堅香子(かたかご)の花」大伴家持の歌1首のみ。古代では余り知られていなかった花のようで、他の花という説も。

そして、いとおかしなお話(解説)も加えますと・・・。

  • 園内の一角に柿本人麿呂が祀られていましたが、万葉集に一番多くの歌を残した歌人、歌聖としてではなく、火難除けとしての火伏せ神様信仰として「火気の元、火止まる」だそうで・・・。
  • 万両、千両、百両、十両を庭に植えているならば、一両のアリドオシを忘れずに植えてください。だって万両、千両が「有りどおし」とならなければ・・・。
  • 大きなだいだいの実がついていましたがその実は昨年のもの、橙は一つの株に2~3年代の果実がつき、冬は橙色に夏は緑色と変化を繰り返すので中国名は「回青橙」、そして日本では代々と栄えると縁起物として正月の鏡餅の上に、ですからミカンでは代用になりません・・・。

(M.K)